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米国不動産実務研修報告-その2 【参加者からのレポート】


RIAグループ 株式会社マンションセンター 小田店長から研修参加後のレポートが届きましたのでご紹介いたします。
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この度は「米国不動産研修」に参加させて頂き誠にありがとうございました。
主な研修内容としては、アメリカにおける不動産の基礎知識から、売買、賃貸、管理に及ぶものでした。当然、日本での不動産経験しかない私としては、日常の業務内容がすべてであり、それらが当たり前の感覚である中過ごしてきました。
今回の研修を通じて、日本とアメリカでは不動産を売り買いする同じような一連の流れが、国によって設けている制度が異なることを知り、またどこか共通点のあるところが感じ取れました。
研修で学んだ知識と肌で感じた部分から私の考察と合わせてご報告させて頂きます。
【ライセンス制度】
日本とアメリカの大きな違いは不動産取引に関してライセンス制度を導入していることです。日本の場合は、宅建業の免許を取得し規定数の宅建主任者を配置することにより、不動産業を始めることが出来ますが、その考え方から違っていました。
その種類はセールスライセンスとブローカーライセンスの2種に大別されセールスライセンス所持者は必ずブローカーに所属しなければならないというものでした。またライセンスは州ごとに発行され、各々の州で違ったライセンス制度があります。ちなみに、日本の宅建試験のように1年1回しか受験できないものではなく、やる気があれば何度でも挑戦できるもののようです。
【エスクローの存在】
ライセンス制度の中でもあらゆることに関して専門家が存在します。その専門家の1つにエスクローがあります。
このエスクローの制度ですが、日本で近いと言われるのが信託です。
動産・不動産の売買の調整にかかわる第三者組織で金銭の授受などの会計的機能から、契約書類の代行機能、タイトルカンパニー・銀行などとの連絡機能など幅広い機能を持ちます。エスクローは主に西部の州に限られ、東部ではこの機能を弁護士が受け持ちます。
日本でもアメリカにおけるエスクローの制度に関心があり、関係各方面への問い合わせがあるとのことです。
【安心のタイトルカンパニー】
タイトルカンパニーとは、日本で主に司法書士が受け持つ任務になります。物件に関する瑕疵、抵当権、使用権など売買に際してクリアーにする役割を持ちます。もし問題が発生した場合、調査と共に金銭的な損害に対してタイトル保険を通じて保証する。タイトルカンパニーに手続きを依頼すると手数料が必要となりますが、安心を買うと思えば決して高いものではありません。買主と売主で費用を折半する場合もあります。
また、今回の研修で実際のタイトルカンパニーに訪問させて頂いたのですが、レンガ調の美術館のような建物で、4棟から構成されていました。建物内の庭には噴水があり、植栽が植え込まれているというようなゴージャスぶりです。
【ディスクロージャー】
日本で言う重要事項説明のことで、アメリカは日本よりかなり早くから義務付けられていました。建物に関するもの、地震帯・洪水地帯など地域に関するもの、騒音や最近周辺であった犯罪に至るまで、売り手や売り手のエージェントに通知義務を負わせています。
契約に関する書類は10枚くらいの書類で足りるのに対して、このディクスロージャーは200枚程の書類に達します。このことから日本の感覚と同じ様に、買い手保護の目的で慎重かつ細部にわたる調査を必要とすることが伺えます。
【HOA】
ディクスロージャーの種類にHOAが存在します。
HOA(Home Owners Association)とは住宅所有者の組合のことです。
日本でいう分譲マンションの管理組合に似ています。
街の管理組合のようなもので、建物の形や色、庭の植える植栽の種類まで制限を付する組合です。また、再三の注意をしたにもかかわらず改善されない場合は街からの立ち退きをさせる権限を持つそうで、その点には大変驚きました。
アメリカでは、買い替えに伴う建物や住宅地は、街並み・景観などのロケーションを気にするのは当たり前になっています。そんな個性・魅力のある住宅地が消費者から求められ、その『魅力』を所有し、管理し、コントロールするのがHOAの役割ということになります。
【アメリカの賃貸プロセス】
アメリカの売買については目を見張るほどの違いはありましたが、日本とアメリカの賃貸のプロセスは、物件を見て気に入れば申込、そして審査、入居のように大きな違いはありませんでした。
唯一違いがあるとすれば、審査の過程でクレジットレポートが必要になることです。
クレジットレポートとは日本でいうところの信用審査に当たります。支払遅れ、倒産、破産、訴訟などの履歴を調査し、さらにローン、クレジット支払の総額も調査します。
その調査内容を点数で表記し、一定の点数以下の場合は借りる資質がないとみなされます。
法人契約でも個人に対する保証が必要であり、個人の立場を重んじる傾向にあります。
また、アメリカの賃貸に伴う仲介手数料(コミッション)は、該当物件の1年間の賃料の3%と非常に厳しい現状でした。
※3%のコミッションはカルフォルニア州におけるものになります。
【実際の売買物件、賃貸物件を視察して】
研修プログラムの午後には、実際の売買物件・賃貸物件の視察を2日間に渡って行いました。
1日目は、ダフィーに乗ってニューポートビーチ(ロサンゼルスとサンディエゴの間に位置する超高級住宅地)の海岸沿いにある高級物件を視察しました。この時の視察はダフィーに乗りながら、外から見た外観や風貌等の観察でした。
ダフィー越しに見る建物は、映画の1シーンに出てくるようなものばかりで、1棟1億円またはその以上の建物が多数見受けられました。また、建物から海辺へは専用船着場があり、自家用のダフィーやボートが標準装備されているという豪華さで、その大きさからも所有者の資産力を伺えるものでした。
その後、近くにある高級賃貸物件『Colony』を視察しました。
高級が着くと決まって標準装備されているのが、屋外プールです。
その他、居住者全員が使えるラウンジやプールがあり、バーベキューセットも完備されている豪華さです。
次に視察した賃貸物件は最低賃料110,000円の1973年築、総戸数が268戸の物件です。驚きはその入居率で、なんと95%です。
当然所有者は大きな努力をしていました。リノベーションです。
当初この賃貸アパートには洗濯機置き場がなかったそうです。入居者のニーズを受け、大胆にもバルコニーの横にある物置スペースを洗濯置き場にリノベーションしていました。
中にはキッチンの広さを削ってまでも洗濯機置き場を確保している部屋もありました。
これらのことから、この賃貸物件に対する周辺ニーズは洗濯機置き場1つとっても非常に比重が大きく、そのニーズに応えることと合わせ、古さを感じさせない工夫とで高入居率の維持をしているものだと感じました。
帰り際のお客様専用駐車場の立て看板には『Future Resident Parking(将来の居住者駐車場)』とかわいい冗談で構える工夫がとてもアメリカっぽく感じたのが印象的でした。
2日目は、新築・中古の売買物件の視察を行いました。
最初の物件は一戸建てで新築物件でした。最近増加傾向にあるアメリカのニーズでゲートコミュニティーというものがあります。街に入る際、専用の監視員がいるゲートを通過しないと中に入れない街のことです。中に入ればハリウッドスターが住んでいそうな豪華さで、バスルームも2つ以上は当たり前、暖炉もあり、庭にもしっかりとした装飾が施され、日本でも普及してきたアイランドキッチンが標準装備になっていました。
その後に視察した、新築の戸建ても1億9000万円の値をつけるもので上記同様圧巻でした。
また、中古売買物件の視察も行いました。その物件はなんと築100年と歴史を感じさせるものでしたが、今のアメリカのニーズと現地コーディネーターの経験による絶対的な自信によるリノベーションで募集開始からわずか数か月で成約とのことでした。
こちらの物件も前述の賃貸物件のリフォーム同様、アイランドキッチンの採用や、洗面台を2つ設置するなど、いわゆる見せる設備が随所に見られました。
視察した物件で共通していたのが、今すぐにでも生活をスタートできると言って良いほどの家具や小物類が配置されていることでした。
日本でも新築分譲マンションのモデルルームで見られる光景ですが、アメリカでは賃貸物件にもフル装備しているそうです。中には寝室のクッションの柄を壁の模様と合わせて売り出しいる新築もありました。聞けば、専門のインテリアコーディネーターと契約の上、打ち合わせをして配置しているそうです。もちろん建築の段階から計画し、成約の際は相互間の取り決めに応じた手数料を分配し合う形になります。売り手としては見せて売るため、買い手としては購入の判断材料とするためと双方にとって目的を果たすための1つの戦略が伺えました。
この視察を通して、アメリカの売買で何をもとに購入の意思決定をするかという点において、すべては『ロケーション』が重要だと言うことを強く感じました。
日本の場合は、駅やバス停、スーパー等への利便性を優先的に考えがちですが、アメリカは全く違いました。
ロケーションを重視することが、次世代のニーズを生むきっかけになり、次の街づくりに活かされていると感じました。
アメリカでは人生で売り物件を購入する回数は約6~7回であり、日本で賃貸住宅を借りるような頻度で売買物件を購入し、生活水準に合わせて次の購入につなげるそうです。アメリカのお家事情としては、良いロケーションに住んでいることが人々の最高のステータスになっており、ロケーションが良ければ居住希望者が増え、物件価値が上がり、それなりの所得者層しか居住することが出来なくなります。
その上、高所得者層が多く住むことにより、街の質が上がり、教育水準が向上し犯罪率が低下します。そこから、多くの人々を呼び込み新たな街ができ、地域が活性化していくというサイクルに結びついているのだと思います。
賃貸物件のリノベーションの内容についてはアメリカと日本で大きな違いは感じませんでした。
しかしアメリカの場合は、売り物件にリフォームして短期間で売るという方法が今注目のビジネスモデルになっており、投資家の購入者が多いと聞きました。
その投資家が、購入物件を賃貸として提供するとき、すでに室内は完成しているため、早期的な満室を狙えます。この取り組みの姿勢・意識に違いを感じました。
研修を終えて
国が違えば、気候や街並みも当然違います。
そして売買・賃貸のプロセスや制度による違いはあっても、不動産業についての取り組みには共通点もありました。
集客にもインターネットを利用することは当たり前で、スマートフォンの普及もあり、簡単で、早く、正確に検索できることがスタンダードになっています。
その上、物件の所有者情報や類似物件も、情報開示化が進むアメリカでは当たり前に行われています。
日本の受け身に近い昔ながらの不動産屋のイメージはどこにもありません。情報発信力と物件保有力に尽きるという感じです。
賃貸に従事する立場として1番興味があったのは、リノベーションでした。
国土交通省の定義では、『新築時の目論見とは違う次元に改修する(改修)』とあります。
アメリカのリノベーションはまさに違う次元への改修に該当します。
バスの窓から見える街中の建物は、どれもこれも同じような年代の建物に見え、古さを感じさせませんでした。HOAの取り決めも影響していると思います。
視察した賃貸物件も40年前の建物でしたが、キッチン関係や水回りを大規模に改修していました。
スペース的に狭い閉鎖的なキッチンは、開放的に壁をなくしていました。
日本で言う壁紙(クロス)もアメリカでほとんど採用されておらず、ペンキ塗りが主流でした。
最初は、「ペンキなんてあり得ない」と思っていましたが、室内の雰囲気とマッチしており、クロスと比べてもそこまで違和感はありませんでした。
総戸数が268戸で複数の棟から構成されたアパートの敷地内には芝生が敷かれ、管理人による手入れが行き届いており、外からも内からも入居率を上げるための努力が見られます。
私が知る限り、新潟ではリノベーションと呼べるものではなくリフォームにとどまるものが大多数です。
この度の研修でご一緒させて頂きました、東京にある不動産業者のリフォーム部の方はこんなことおっしゃっていました。
「今回の研修では色々再確認が出来た。アメリカに来て勉強になったというより、自分達が今までやってきたことは、間違ってはいなかったしこれからも日本で充分通じる。そう確信できた研修だった。」
この言葉を聞いたとき、私も同じことがいえたかというとそうではありませんでした。
地域や慣習が違うので一概にすべてを同じにすることは難しいですが、リノベーション分野における考え方などとても参考になりました。
また、アメリカの売買に触れ、そして、この度の研修でご一緒させて頂きました同業者の方々のお話を聞かせて頂き、賃貸業だけの視野で物事を考えるのではなく色々な視点から不動産業に関わっていきたいと思いました。
今回の研修で講師をしてくださいましたジャック才田さんと夕食でご一緒した際に、研修内容などでお話しをする機会があったのですが、不動産に関するお話をする時のキラキラした笑顔がとても印象的でした。分からないことを何度も教えて頂きました。
そんな不動産業に対する一直線な姿勢を拝見したとき、これが本来あるべき姿ではないかと強く思いました。活躍する場所は違っても1人の顧客に対して行きつく最大のサービスは共に同じなのでないかと再確認しました。
その気持ちを大切に、初心を忘れず、今後は広い視野を持って取り組んでいきたいと思います。
以上を持って米国不動産研修レポートとさせて頂きます。
この度は、米国不動産研修に参加させて頂きまして誠にありがとうございました。

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