ライヴスby西村建設 西村 哲 氏(週刊住宅タイムズ/20240408)
築古老朽化物件の空室対策として主な解決方法で思い浮かぶのは、外壁を綺麗にしたり、キッチンやお風呂などの設備をかえたり、間取り変更などが考えられるが、外壁塗装は足場を掛けると多額な費用が掛かり、設備の交換もそれなりに費用がかかるし、さらに数年もすれば再び時代に合わなくなってしまい、費用をかけて設備投資しなければならない悪循環に陥ってしまう。間取り変更は広さがあれば可能だが、20~30平方㍍程度の広さではやりようがない。
「築古・老朽化物件」の場合は、空室を埋めるために家賃を下げる以外方法はないのか。それは違う。家賃を下げてしまうと入居者の質が落ちてしまい、結果、家賃を滞納されたり、室内の使い方が荒かったり、また近隣に迷惑をかけたりして最終的には物件全体の質を落とすことにもなりかねない。
では「築古・老朽化物件」で「質の高い入居者」を確保することはできるのかといえば、もちろん可能だ。ここでいう「質の高い入居者」とは、高収入である入居者という意味ではない。トラブルを起こしたりせず、ルールを守り、建物を大事に使ってくれる入居者をいう。
私の経験上そのような人達は、生活環境や居住空間に興味がある人達だから、魅力ある物件であればずっと住み続けたいと思って良い入居者になってくれるもの。
今回は20年前に施工した築40年超え、16平方㍍の1Kタイプの物件を解決し、今も退去後すぐに入居が決まる人気物件に生まれ変わった事例を紹介する。
コンセプトとして若い女性をターゲットとし、川辺というロケーションを活かし、癒しの「アジアンスタイル」をテーマとした。どこか懐かしく、落ちつきはあっても古臭さを感じさせない、そんな住空間を演出し、ここでしかできない「オンリーワンスタイル」を作り上げた。
まずは、居室の天井に160本の黒竹を張り付けて埋め尽くした。部屋で黒竹を目にすることだけでも魅力に感じる人もいる。
黒竹は既存のクロスの上に直接張り付けるため、クロスを剥がす手間が省ける。今後もクロスを張り替える必要もなく、原状回復費用を抑えることができる。
次に壁や天井のクロスと床材のクッションフロアは、幾何学的・呪術的なアジアンテイストの模様や彩りのあるものを選び、カーテンの代わりにバンブー簾、照明器具はバンブー照明を備え付け、居住空間全体をアジアンイメージにして独特な雰囲気をかもしだしていく。
玄関扉も古く色落ちが目立っていたが、全面を塗り直すには費用が掛かったり部屋の風合いと合わなくなることを危惧し、幾何学的なアジアン模様を既存の塗装の上にペイントしたところ、色落ちも目立たず部屋のコーディネイトとマッチした扉に生まれ変わった。施工期間は7日。施工前に部屋の床に広げられた黒竹を見た「若い女性」の内見者がこの部屋を気に入り、即入居申し込みに結び付いた。家賃は5千円アップの7万円(当時)に。
20年近く経つが、退去後もほぼ女性に入居いただき、人気物件になった。