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減便・廃止相次ぐ路線バス/早くも「2024年問題」の影響各地に/深刻化する運転手不足

慢性化してきた人手不足に加え、働き方改革の“2024年問題”の影響が各方面に及び、国民生活の“足の基盤”が揺らぎ始めている。その1つが運転手不足による公共交通、路線バスの減便や運行時間の短縮、運行廃止だ。地方だけでなく、大都市でも各地で相次ぎ、今後加速すると懸念されている。例えば、首都圏では4月の小湊鉄道バス(千葉県市原市)に続き、5月には京成バス(千葉県市川市)が人手不足などを理由に一部運行系統の廃止や運行時間の短縮を発表した。廃止や短縮エリアには人口の多い東京都内も含まれている。
■住宅・不動産とも密接に関係
 全国的に路線バスの減便・廃止・運行時間の短縮などが相次いでいる大きな理由は、改善基準告示の改正だ。改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善の基準」を指す。この基準は2022年に運転者の健康確保などの観点により見直され、今年4月に拘束時間の上限や休息期間などが改正された。いわゆる「2024年問題」だ。 これまでの運転者の1年間の拘束時間は3380時間。これが4月以降に、原則3300時間に改正されている。継続8時間とされていた1日の休息時間も、基本は11時間とし、下限は9時間に伸びた。今回の改善基準告示の改正が拍車をかけた形だ。

■高齢者や生活保護受/給者は「交通弱者」に
 路線バスは、言うまでもなく国民にとっての足だ。通勤・通学はもちろん、通院、買い物など、幅広い用途で利用される。駅まで歩けない距離に住んでいる人にとって、路線バスの廃止などは生活を揺るがす問題になりかねない。廃止路線にコミュニティバスの導入が検討されることもある。実際に運行するようになったエリアもあるようだが、コミュニティバスの運行にも運転手は必要であり、コロナ禍を経てコミュニティバスの運行が大幅に減ったエリアも見られる。
 特に深刻な影響を受けると見られるのが、高齢者や生活保護受給者などの社会的弱者だ。
 高度経済成長期以降に供給された大規模な住宅団地は、駅から距離があることも多く、居住者の高齢者の割合も高い。こうした団地にとって、路線バスはまさに生活に欠かせないライフラインのような存在だ。その一方で、空き家の増加が著しく、バスの利用者も減少していることから、これまで通りのバス便の運行を維持することは難しくなることが目に見えている。
 高齢者は自家用車の運転やネットショッピングの利用も容易ではないため、数人でタクシーに乗り合って通院や買い物に行ったり、出張販売所に来てもらったりするなどして、なんとか暮らしを維持している地域もある。これまで地方で目立っていた「公共交通空白地」が、都市部でも増える可能性も低くはない。
 また、200万人以上いる生活保護受給者(21年11月時点)にとっても喫緊の課題となる。生活保護受給者は家賃制限があるため、駅前・駅近などいわゆる好立地に居住することが難しい。さらに基本的に自家用車の所有も認められないことから、バスの廃止や減便が暮らしの利便性を大きく揺るがしかねない。
 高齢者や生活保護受給者のみならず、バス便エリアに不動産を所有している人にとっては資産価値の低下も危惧される。不動産の売却査定では、立地の優位性の評価は高く、バスの運行頻度も評価される。
 街をコンパクトにする立地適正化計画の推進もあいまって、バス便の廃止や減便、空き家の増加、バス利用者の低減、不動産価値の下落……。これらが悪循環となって、駅や幹線道路から遠いエリアの不動産と好立地の不動産の価格の二極化は今後ますます進んでいく可能性もある。

■路面電車自動運転/解決の糸口となるか
 近年注目されている自動運転や路面電車を基軸としたまちづくりは、路線バスの廃止や減便、そしてそれに伴う交通弱者の発生といった課題を解決する糸口になるのだろうか。
 まもなく開業1周年を迎える次世代型路面電車「ライトライン(LRT)」の整備を推進している宇都宮市では、地域の移動手段として着実に定着しつつある。開業から5カ月の利用者は、約190万人。当初の予測を上回る成果を上げている。7月1日に公表された24年度路線価では、LRT沿線住宅地の地価の上昇も見られた。
 LRTは、専用レールを走るため車の流れの影響を受けず、100%バリアフリーかつ排気ガスを出さないというバスとは異なる特徴がある。加えて、これまで車による移動者が多かった宇都宮の東西に、時間に正確で輸送力の高いLRTを整備することで、路線バスの利便性向上や利用者増加にも期待できるという。バス路線との連携や駐車場整備によるパーク&ライドシステムの導入など、総合的な交通ネットワークの改善も図られている。
 一方、自動運転技術については、各地で実証実験が進められている。成田空港の事例では、ローカル5Gとキャリア通信の冗長化構成を採用し、遠隔監視システムによる無人運転に向けた取り組み。25年までの実装を目指し、段階的なアプローチで技術の成熟と社会の受容性向上を図っている。
 茨城県境町では23年11月、国内で初めて自動運転EV「MiCa」を導入。今年5月までの指定日に、片道約2キロのルートを運行した。7月からは定期運行を開始。乗車料金は無料で10人を定員としている。
 自動運転の推進や路面電車の開発は、従来の路線バスが抱える多くの課題に対する解決策となる可能性を秘めている。しかし、その実現には技術面と社会制度の整備や市民の理解、そして地域の特性に応じたきめ細かな対応が求められることから、こちらでも二極化が見られそうだ。

(2024年7月8日 週刊住宅タイムズ)

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