日本を代表するバレリーナ・吉田都さん。
世界三大バレエ団と称される
英国ロイヤル・バレエ団をはじめ、
イギリスの伝統あるバレエ団で
プリンシパルを務めてきました。
吉田都さんはいかにして世界の大舞台で
結果を出し続けてきたのでしょうか。
その秘訣を語っていただきました。
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〈吉田〉
サドラーズウェルズの和気藹々とした雰囲気とは違い、
英国ロイヤル・バレエ団はさすが
世界三大バレエ団の一つと称されるだけあって、
ダンサーたちのプライドの高さと
情熱の強さには圧倒されるほどのものがありました。
100名ほどいるダンサーの中から
プリンシパルになれるのは僅か6~8名。
普通なら私もコール・ド・バレエから競争を勝ち進み、
その座を掴まなければならないのに、
いきなりプリンシパルのランクで
横から入ってきたわけですから、
もともといたダンサーたちにしてみれば
面白くない存在なのは当然でしょう。
当初は私を責めるような冷たい視線を浴び、
随分肩身の狭い思いをしました。
<――そういう中で15年間、
英国ロイヤル・バレエ団の
プリンシパルを務めてきたわけですが、
いかにしてプレッシャーと向き合ってこられましたか。>
〈吉田〉
ある意味、鈍感力を育んでいくというか、
そういう周りの視線や陰口をシャットアウトして、
自分のなすべきお稽古やリハーサル、
舞台に集中するようにしていました。
15年の間には、舞台に立つ自信が持てない時も
怪我で苦労した時もあります。
プレッシャーが高まると、失敗するかもしれない、
舞台に立つのが怖いといったように
ネガティブな思考に陥りやすく、
不思議なことに心がぶれると体の軸までぶれてくるんです。
そういう時は自分のネガティブな気持ちを否定せず、
とことん見つめ、向き合い、
じっくりと味わい尽くす。
そして、今度は笑顔で一杯のカーテンコールの様子など、
よいイメージを頭に浮かべ、
とにかくできる、うまくいくと信じる。
このようにして本番に臨んでいました。
本当に日々闘いという感じで、
プリンシパルとしてずっと主役を踊りながらも、
自分の中で納得いく表現がなかなか
見つけられない時期が長かったですね。
自分の信じる踊りでいいんだって思えたのは、
英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルになって
10年以上経ってからです。
※本記事は月刊『致知』2017年10月号
特集「自反尽己」から一部抜粋・編集したものです。